大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1586号 判決

借地法一条にいう「建物の所有を目的とする」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であつても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解すべく、ここに「建物」とは、工作物よりは狭い観念であつて、住居のほか営業、物の貯蔵等の目的に使用される独立性のある建物を広く含むが、結局は一般通念に従つて決するよりほかはないと解すべきである。

これを本件につきみるに、原判決の認定した事実(その一部を訂正すること前示のとおり)に、成立に争のない乙第五ないし第一三号証、当審における証人小田善三、金子三郎、中島すいの各証言、検証の結果及び弁論の全趣旨をあわせると、(1)控訴人が少くとも、本件土地の限度で被控訴人の借地権の譲受けを承諾した昭和二九年一二月三一日当時から、別紙物件目録記載の各建物(本件各建物)は、ほぼ別紙物件目録記載のような現状のまま、別紙建物位置図記載のとおりに同目録記載(二)の土地(本件土地)上に存在していること及び同目録記載(二)の建物は世間通常の住宅であり、同目録記載(三)の建物は鶏舎として建築されたとはいえ、単なる雨露をしのぐにすぎない建物ではなく、堅固な木造の合しようを骨組とした屋根を有し、まわりに太い柱を有する建物であること、(2)被控訴人は右当時から昭和三四年ころまでは妻ともども養鶏業を営んでいたが、その後はこれをやめ筆耕を主とし、妻が右の養鶏業をやめるとともにはじめた畜犬業の手伝をしていること、(3)この間、被控訴人は、別紙物件目録記載(二)の建物を住居の用に供していること、(4)別紙物件目録記載(四)、(六)の各建物においては、右養鶏業が営まれていたさいには、これがため鶏舎として鶏が飼われていたが、その後は引続き犬舎として犬が飼われていること、(5)別紙物件目録記載(三)の建物は、右養鶏業が営まれていたさいには、これがため、その一、二階は鶏舎として使用されその三階はその雇人の住居に供せられていたが、畜犬業がはじめられるに及び、二、三階は器具置場に使用され、一階のみが犬舎として使用されていること、(6)別紙物件目録記載(五)の建物は、当初は鶏舎として使用されていたが、畜犬業がはじめられるに及び車庫として使用されていること、(7)本件各建物のうち、右(二)、(三)の建物は人の住居に供せられもしくは人の住居に供せられた建物であり、その余の建物も、鶏舎、犬舎、車庫として使用され、いずれも鶏犬の世話ができるような人の出入ができる建物であり、事実これまで人が右の世話のため出入し、現在も出入している建物であること、(8)本件土地の一部を現に犬の運動場として使用してはいるが、これは畜犬のためには従たるものにすぎないこと、(9)控訴人は以上の事情を知りながら、昭和三七年四月五日、昭和三六年四月一日から昭和三七年三月末日までの本件土地の賃料を受取るまで、引続き宅地としての賃料と知つて本件土地の賃料を異議なく受領していたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

以上の事実に、養鶏、畜犬といい、いずれも、これら動物を収容すべき建物が主たる営業の要素となること明らかであること及び前示引用にかかる原判決の認定した(その一部を訂正すること前示のとおり)被控訴人に賃貸すべき土地の範囲を測量し実測図が作成され、右範囲を本件土地とされ、右実測図に基き他の部分との境に溝を設けた事実をあわせ考えると、控訴人と被控訴人との間の、本件土地の賃貸借の合意は、本件土地全部をその敷地として本件各建物を所有することを主たる目的とすることにあつたものと認めうべく、しかも本件各建物は、あるいは養鶏もしくは畜犬という営業の用に供せられ、あるいは住居の用に供せられた各独立の建物であり、これらを敷地内にそれぞれ配置し、全体としてその効用を全うせしめているのであつて、これは借地法にいう建物にあたると解しうるから、本件土地の賃貸借は、その全部につき借地法の適用があるというべきである。

(浅沼 間中 柏原)

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